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閉鎖した世界。
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08 , 05
昔、犬を飼ってたことがある。
母の勤めてた病院の側のドラッグストアに捨てられていた柴系の雑種の子で、
割と体の小さめなメスのわんこだった。
その時点でその子は3歳くらいで、よく吼えたし、よく食べた。
野良の子だったからだろうか、脱走もしたし、一回噛まれたこともある。
けど、すごく懐いてくれて、いっぱい撫でたし、抱っこもさせてくれた。

その子が死んだ時、僕は小学五年生で、
初めて命が失われるものだってことを理解した。
裏の畑に撒いていた農薬を齧ったのが原因だったらしく、
動物病院に運んで、手術台の上に乗せられた彼女は、
身悶えて暴れて、口から泡を吹きながら死んでいった。
今でも、死骸というのがああいう風に硬直して、剥製みたいになるんだということを覚えている。

悲しかった。
神様は不平等で、残酷なんだとひたすら呪った。
父の実家の裏山に埋めてきたけれど、あの子は今もあそこに眠っているだろうか。


そんなことを、NHKの動物保護特集を見ていて思いだした。
近年、日本におけるペットの価値は恐ろしいほどに急落を始めている。
原因は大量生産と、そして大量販売。
専門外の業者が子犬や子猫を育成し、ひたすら増やしてはペットショップに売り飛ばす。
子犬・子猫のケアなどまるで無視している悪質な業者が、近年急増しているという。
番組内でインタビューを受けていた元業者だという男は、
「(母犬は)子犬を生産するための機械ですよ」
と平然と口にした。

日本のペットショップでの子犬・子猫の販売は、60日以内が限度だという。
それ以上は成長しすぎて売値が急落し、売り物にならないのだと聞く。
本来であれば十万~十五万の子が、三ヶ月目に入るとその半額になる。
エサ代などの飼育費に予防接種の値段を考えれば、
五万円程度では元手を取れなくなることは容易に想像できる。

では、その売れ残りの子は何処へ行くのだろう?
あるいは、ペットショップですら買い取ってくれないような子はどうなるのだろう。

結論。

廃棄。

ペットとして誰かに買われることもなく、業者の手元に残った子は、
全て保健所に持ち込まれて、ガス室で処分されるのだという。
中には母体として保護されて、子犬を生ませるために利用されるケースもあるだろうが、
生育環境が悪かったり、病気になってしまったりしたのなら、全て処理施設行きなわけだ。

全て、人間のエゴである。
食べるわけでもなく、大事に育てるわけでもなく、
都合のいいように交配をさせられ、都合のいいように売り飛ばされ、
そして都合のいいように捨てられる。
子犬を生産する業者も、子犬を販売する業者も、そして子犬を買い取った飼い主も、
皆、都合が悪くなれば保健所に持ち込んで処分して欲しいと申し出る。
そう。
まるでリセットボタンを押すみたいに、気軽に捨てていくのだ。

保健所でガスを浴びて殺される子はまだいいのかも知れない。
生産業者が経営難に陥って、「工場」から失踪したケースも映像にあったが、
ノミやダニ、ウジ、ハエなどが大量に発生した不衛生な環境で、
一頭一頭が衰弱死して、その腐乱した死骸に囲まれて、
エサも与えられず、檻の中に閉じ込められたままの、そんな連中もいるのだ。
中には共食いして死んでいったものもいるかも知れない。

全て人間のエゴだ。
戦争の残虐性を訴え、ヒロシマ・ナガサキの悲惨さを訴える反面で、
ペット(人間が食べないけれど、愛玩する動物として定義)に対しては、この残虐性だ。
ヒトでなければ、こんな仕打ちを許していいのだろうか?
ヒトでなければ、安値で売り買いして、安値だからと安易に捨てていいのだろうか?


逆に、ペットに衣服を着せて、まるで子供のように扱うケースもあれはあれでおかしい。
可愛いのもわかるし、大事にしたいのもわかるのだけれど、
それをスタンダードだと思っている飼い主が増えていることが怖い。
大事に扱っているうちはいいのだが、
まるで「お人形さん」のように可愛がっていることが僕には怖いのだ。


例として書いてみる。

小学生の娘が、ペットが欲しいの、と言ったから、
お父さんは奮発して、ペットショップでチワワの子を買って来た。
初めの一年は可愛い可愛いと四六時中一緒に遊んでいた娘も、
二年目になると、最近発売したゲームの方に夢中になってしまい、
散歩も気がつけばお父さんの仕事で、お父さんもお父さんで面倒くさくなってきた。
そして、家族旅行に行こう、と言った時に、チワワの子をどうしよう、という話になる。
最近ではペットホテルという便利な施設もあるわけだが、
旅行に行く旅に預けるだけのお金が掛かり、一家の財政も決して楽ではなくなってきた。

そして近年の不景気・経営難でお父さんの給料が減った。
娘も中学に入る頃になり、お小遣いの額が増えた。
チワワの子も年を取るとだんだん可愛くなくなり、
お母さんがダイエットのついでに仕方なく散歩をしているという程度。
旅行に出かけようという度にペットのことで揉める。
あまり遠くへは旅行に行けない、この子がいるから、とお母さんが言うと、
娘がかんしゃくを起こして、何で何で、と騒ぐので、
「そんなに言うなら、アンタのお小遣いからホテル代出しなさい」
と言えば、余計に腹を立てて、反発する。
気がつけば、我が家で一番のアイドルは、一家で一番の邪魔者だ。


子供のうちはどんな動物だって可愛くて当たり前。
ペットショップのショーウインドウで飾られているのは、一番可愛い瞬間なのだ。
粗相をしても店員さんの方できちんと片付けてくれるし、エサだって健康重視にされている。
それが、一度家に着いてしまえば、全て自分の責任なのだ。
可愛くするのも、可愛くなくするのも、全て自分たちの責任だ。

ペットに対して、日本人は溺愛をするか煩雑に扱うか、両極端になってきている。
「家畜」としての感覚が次第に薄れてきているのは確かだと思う。
かつて、犬は防犯対策として、猫はネズミ捕りとして仕事を与えられて、
それゆえの「家畜」だったのだが、今ではただの愛玩動物だ。
余計に感情を持つゆえに苛立たしく思うこともあるし、極端に泣いてしまうことがある。
もっと自然に、優しく、けれど割合ドライな付き合い方でいいんじゃないだろうか。

それこそ、家族と思うくらいというのは、
そこまでベタベタにくっついていたりするものでもなく、
極端に煩わしく思ったりするものでもない。
居ないと心配になり、けれど居て特別に高揚するものでもなく、
そういう、空気に近い大切さを感じるものとして扱うのが、ペットに対するマナーのように思う。

インターネットオークションで、1円から売り飛ばされる子犬が後を絶たないらしい。
そんな風に、 まるで奴隷のように売られていく彼らの姿を見たら、
今の日本人のモラルが如何に低く浅ましいものなのか象徴しているように思えた。
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